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第2回電王戦を機に将棋を指すようになりました。棋力は全く上がりません。 主に大盤解説会の話題。

第29期女流王位戦 開幕局 大盤解説会に行ってきた

(仕事の用事を作り何とか札幌へ)

彼女の将棋を観なければならない。

奨励会を三段で退会し、女流棋士一本となった里見香奈 女流王位。今回防衛するとクイーン称号を得る。
LPSA に所属し着々と実力をつけてきた渡部愛 女流二段。タイトル初挑戦。

両者とも苦難の道を歩んでおり、今回のタイトル戦は象徴的な意味を持つ。
一つのチャレンジが終わり次のステージに立つ里見香奈。今回のタイトル戦が次のステージへのステップとなるであろう渡部愛。
だからこそ、私はこの歴史に1ページとなる日に同じ場所で何かを感じ取ろうと思った。

第29期女流王位戦の開幕局は、渡部の故郷である北海道で行われるということも大きい。
北海道出身の私は、今回ばかりは渡辺女流二段を応援しなければならない。Minerva (LPSA ファンクラブ)には入っていないが、同郷の棋士・女流棋士は常に視界に入っている。

北海道には大地の力があると昔から言われている。
北海道に地に降り立つと、広い台地と澄み切った空気からパワーを感じる。この力が、渡部の将棋に良い作用をもたらすに違いない。

5月9日 朝 薄曇り 
東京と違い、札幌はまだ寒い。早朝や夜は気温10度を下回る。シャツ1枚では寒くコートが必要だ。湿気の少ない済んだ空気は、直接的には肺臓を洗浄してくれ、そして気分的にも心地よさを感じさせてくれる。懐かしい空気感だ。
朝9時に対局は開始されるが、現地大盤解説会は15時から。携帯中継で戦況を確認する。振り駒は歩が三枚で里見女流王位の先手。そして先手中飛車、後手居飛車で戦いが進んでいく。


通称マナスポ:同じ位置から写真を撮影

棋譜 : http://live.shogi.or.jp/joryu-oui/kifu/29/joryu-oui201805090101.html

午後、大盤解説会の会場へと向かう。
開場と同時に100人以上の観客が詰めかけ、終局時には300人を超える。今回に限れば 99% 渡部応援だろう。



残念ながら大盤解説会中の写真撮影が禁止とされたため、休憩中の一枚。

大盤解説会は立ち合いの屋敷九段、聞き手に地元の久津女流二段。加えて、LPSA 代表の中倉さん、帰省中の野月八段、なぜか札幌に遊びに来ていた田村七段が飛び入りで解説を行ってくれる。
野月八段、田村七段共に渡部女流に指導したり研究会をしていたりとのことで、今回も実質応援だろう。

中盤、渡部女流二段の桂馬の成り捨てから激しい展開となり、瞬間的に後手の駒損ながら穴熊の堅さも活かして後手優位に進んでいく。後手から桂馬での角金両取りの局面からは後手がとても指しやすいように思える展開に。ただ、先手は一段目に竜を作り後手の玉に遠方から狙いをつけている。
そんな中、いままで強気で攻めていた後手が 32銀と引き、先手からの43の地点への攻めに対する受けの手を指す。ここで一気に形勢が逆転し先手が優勢となる。将棋は難しい。
以降、棋譜は公式サイトから確認いただけれ分かるが、後手玉は寄りの状態に。

だが、ここで詰めかけた300人強の念力が働いたのか、北海道の大地の力が働いたか、里見女流王位が詰み手順を間違えるという大事件が発生する。
大盤解説会の野月・田村の両先生は、「(負けたけど)良い対局だった。次につながる。」と諦めのコメントをしていた最中のことで、棋譜中継の更新を元に検討を重ねると後手玉が詰まない = 後手が勝つ、ということに気が付き、会場が騒然となる。いや、騒然どころではなく、悲鳴に近い歓声が沸き起こっている。急きょ、(終局に備えて)対局場近くで控えていた屋敷九段も大盤解説会場に戻ってきて、解説に加わり、検討を始める。後手玉はするスルスルと逃げることができ、詰まない! 色々な詰み手順がありそうな局面だけれども、どうやら正解は一つ、23香だけだったようである。

里見女流王位も指してから気が付いたようで、指し手が進まない。
長い時間を費やし、(多分、観念した様子で力なく) 金を打つ。後手はその金を馬で取る。パタパタと進む。あとはどのような終局図にするかどうかだけの問題のようである。

屋敷九段が「ここで飛車を打って投了したらかっこいいね」と言っていた通りになり、114手目の局面で里見女流王位が投了する。


(終局直後の渡部愛女流二段 中継サイトより)

終局後、二人の対局者が大盤解説会の会場に来てくれた。
表情が硬いままの渡辺女流二段は、「中盤は難しく、はっきりと悪手を指した局面もあり苦しかった。次局もご注目頂けるように頑張ります。」と控えめなコメント。
里見女流王位は、「最後の方で、うーん、絶対に詰まないですよね?」と表情柔らかに、吹っ切れたかのような軽い笑顔も見せながら、詰みを逃したことを悔いているよう。「里見さんが詰ませられなかったら、ここにいる誰も詰ませられなかったと思います。」という屋敷九段からの優しいフォローにも、里見女流王位は笑顔で、続けて「酷い手を指してしまい、将棋の怖さを思い知った一局となりました。こんな逆転負けは記憶になく、でも(これだけ明快に間違ったのであれば)切り替えやすいので次も気を引き締めて頑張ります。」と、精神的なショックは無いように見えます。この切り替えこそが強さの秘訣かもしれませんね。北海道で美味しいものを食べて英気を養ってください。


会場を後にすると、外の気温は 8 ℃。北海道の夜はまだまだ寒い。でも、今日は本当に熱い戦いを見ることができた。
今日は渡部愛女流二段の応援、でも、里見香奈女流王位も応援している。
今回のタイトル戦は、どちらが勝っても、人生の節目となりそうなタイトルとなるであろう。だから私は見守りたい。今回の二人の戦いの行方を、女流棋界の新しい未来を。


#大盤解説会
今日も疲れた!
明日は仕事してから横浜に帰るよ!

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