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第2回電王戦を機に将棋を指すようになりました。棋力は全く上がりません。 主に大盤解説会の話題。

渡部愛新女流王位誕生記念パーティー に行ってきた

渡部愛新女流王位誕生記念パーティー
◆日時:201892日(日)17:30開場 18:00開始

◆場所:銀座 Sun-mi 高松7丁目店

2018年6月13日に里見香奈から女流王位を奪取した渡部愛、そのパーティが開かれる。
タイトル初戦からは約4か月、タイトル獲得からは約3か月経過している。時が経つのは早い。

同郷の女流棋士の奮闘を祝福しない訳がない。
曇り空の東京、銀座に向かう。


(中倉姉妹)

ゲストには髙見叡王、先崎九段、野月八段、瀬川五段と豪華な顔ぶれで、それぞれの祝辞が面白い。あまりネタバレを書かない主義なので詳細は省きますが、野月八段のコーチングについての話が興味深かった。きっと野月先生の指導は超スパルタだと思います。攻めの棋風の先生なので、たぶん相当厳しいキラーパスを出していると思います。それについていく渡部愛さんも相当根性入ってると伺えます。「女流タイトル獲得ではなく、(男性) 棋士に勝てるようになることが目標。はやく私を追い越して欲しい。」と話していたのも印象深いです。



髙見叡王、先崎九段、瀬川五段も祝辞。
NHK のカメラも入っており、10月の将棋フォーカスで放映されるらしいので詳細は割愛。


女流三段の免状。LPSA は中倉代表理事が発行するんですね。



新たな決意を語る渡部愛女流王位。
女流棋界は "渡部愛包囲網" が敷かれ、全ての女流棋士がタイトルホルダー相手に一発入れようと研究しているはずだ。それが追われる立場ということである。更なるパワーアップをしなければ生き残れないことは本人の言葉からも感じ取れた。


「渡部愛クイズ」
出身の小学校は?などのクイズが出される。最後は蒲田道場の方がクイズ王?に。


終始和やかでアットホームな雰囲気のパーティとなり楽しむことができました。
料理も美味しかった。写真撮ってないけど。


参加者に配られたリーフレット。


第4局の自戦解説メモ。


記念扇子。もったいなくて使えない。

第30期女流王位戦は、これから予選、リーグ、決定戦を経て、来年5月には初めての防衛戦を迎えることとなる。果たして誰が挑戦するのだろうか?

皆が「まなちゃん」と呼ぶ親しい空気が流れている。
皆が笑顔で彼女を見守っている。
彼女はそれを素直に受け取ればいい。

20時を過ぎ散会。
私は優しい気持ちを抱き、清々しさを感じながら会場を後にした。
何か不思議な感じだった。
日曜日の銀座には喧噪は無く、静かに佇んでいた。
第29期女流王位戦が、私の中でようやく完結したことに気がついた。
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第20回京急将棋まつり 初日に行ってきた

2018年8月11日 第20回目となる京急将棋まつりに行ってきました。
初日のプログラムは以下の通り(実態に合わせて加筆)
10:45 開会式 (司会)伊藤 明日香
11:00 女流棋士全員で記念写真タイム
11:10

「オープニング対決」
中井広恵女流六段 VS 山田久美女流四段
「解説」斎田晴子女流五段
「聞き手」塚田恵梨花女流1級

13:00 ゲスト棋士 (山崎八段) インタビュー
13:10

「10分切れ負け対決」
和田あき女流初段 VS 塚田恵梨花女流1級
「解説」山崎隆NHK杯

「聞き手」渡部愛女流王位
*勝者は山崎NHK杯と
10分対2分の切れ負け対決

山崎八段・塚田女流 vs 渡部女流王位・和田女流
(ペア・10分切れ負け)

15:00 初級講座 (中村修九段)
17:00

「メイン対局」
渡部愛女流王位 VS 伊藤沙恵女流二段
「解説」山崎隆之NHK杯

「聞き手」和田あき女流初段



今回の京急将棋まつりは、「女流棋士の祭典」と銘打っており3日間通して多くの女流棋士が登場する。


オープニングは女流達人戦として紹介された中井女流六段vs山田女流四段。同世代ということで公式戦でも数多く対局しているようです。解説の斎田女流五段から、居飛車党の両対局者のいずれかが振り飛車を指してほしいと楽屋で注文があったそう。両対局者が対局前のインタビューでけん制しあう。だが実際には結局相振り飛車に。そして両対局者とも相振り飛車はそこそこ経験があると対局後に語っていた。


読み上げは伊藤女流二段。
山崎八段から「変な手を指したら読んでくれないよ!」と両対局者のプレッシャーが入る。



切れ負けならではのスリリングな戦いが繰り広げられ、最後は塚田女流の勝ち。


そして、山崎八段と塚田女流の時間ハンデの早指し対局。
山崎八段が2分、塚田女流が10分。
山崎八段の自称 「0.5秒指し」で時間を使わず序中盤を進め、そのタイミングにつられてしまい塚田女流も超早指しで対応してしまう。
両者の早指しに完璧についていって読み上げをする伊藤女流もスゴイ。


大盤解説が追い付かず堪らず盤面を確認しに行く渡部女流王位。一度、時計を止めて大盤上に再現をする。
結果は山崎八段の鮮やかな攻めがヒットして完勝。塚田女流の敗因は同じペースで指してしまったことと話したように、要所で時間を使いきれなかったのが悔やまれる。

そして時間が余ったということで、急遽ペアの切れ負け対局が組まれることに。

グーとパーで組み分けする。「グーとパーで合った人」(北海道風)という掛け声だったかどうかは覚えていない。


山崎八段は大盤操作+解説も同時に行うということで遠隔で指し手を指示する方式で進める。
そのため何か塚田女流の2面指しみたいな構図に。


10分切れ負けでペアという慣れない対局形式ながら、相居飛車で相掛かりの駒組みから激しい戦いが繰り広げられる。


「相掛かりになって息が合ってるなと思いましたよ。やっぱり師匠から相掛かりを教わってるんですよね?」
「いえ、私、相掛かりは指さないんです。女流ではそういう形にはならないので。」


メイン対局には、懸賞金(京急商品券)が掛かる。
「四回もタイトル挑戦しているのに獲れていないんです!だから対局で悔しさを晴らしたいです!」と意気込む伊藤女流。
結果、154手の熱戦で渡部女流王位の勝ち。
勝負強いです。


最後は、次の一手、詰将棋の懸賞クイズの抽選会。
急遽用意した女流棋士が書いたミニ色紙も景品に。和田さん・・



ということで楽しい初日が終了。
ざっくりですが、こんな感じです。載せきれない写真はツイッターで投稿するかも。

今日も疲れた!


第29期女流王位戦 開幕局 大盤解説会に行ってきた

(仕事の用事を作り何とか札幌へ)

彼女の将棋を観なければならない。

奨励会を三段で退会し、女流棋士一本となった里見香奈 女流王位。今回防衛するとクイーン称号を得る。
LPSA に所属し着々と実力をつけてきた渡部愛 女流二段。タイトル初挑戦。

両者とも苦難の道を歩んでおり、今回のタイトル戦は象徴的な意味を持つ。
一つのチャレンジが終わり次のステージに立つ里見香奈。今回のタイトル戦が次のステージへのステップとなるであろう渡部愛。
だからこそ、私はこの歴史に1ページとなる日に同じ場所で何かを感じ取ろうと思った。

第29期女流王位戦の開幕局は、渡部の故郷である北海道で行われるということも大きい。
北海道出身の私は、今回ばかりは渡辺女流二段を応援しなければならない。Minerva (LPSA ファンクラブ)には入っていないが、同郷の棋士・女流棋士は常に視界に入っている。

北海道には大地の力があると昔から言われている。
北海道に地に降り立つと、広い台地と澄み切った空気からパワーを感じる。この力が、渡部の将棋に良い作用をもたらすに違いない。

5月9日 朝 薄曇り 
東京と違い、札幌はまだ寒い。早朝や夜は気温10度を下回る。シャツ1枚では寒くコートが必要だ。湿気の少ない済んだ空気は、直接的には肺臓を洗浄してくれ、そして気分的にも心地よさを感じさせてくれる。懐かしい空気感だ。
朝9時に対局は開始されるが、現地大盤解説会は15時から。携帯中継で戦況を確認する。振り駒は歩が三枚で里見女流王位の先手。そして先手中飛車、後手居飛車で戦いが進んでいく。


通称マナスポ:同じ位置から写真を撮影

棋譜 : http://live.shogi.or.jp/joryu-oui/kifu/29/joryu-oui201805090101.html

午後、大盤解説会の会場へと向かう。
開場と同時に100人以上の観客が詰めかけ、終局時には300人を超える。今回に限れば 99% 渡部応援だろう。



残念ながら大盤解説会中の写真撮影が禁止とされたため、休憩中の一枚。

大盤解説会は立ち合いの屋敷九段、聞き手に地元の久津女流二段。加えて、LPSA 代表の中倉さん、帰省中の野月八段、なぜか札幌に遊びに来ていた田村七段が飛び入りで解説を行ってくれる。
野月八段、田村七段共に渡部女流に指導したり研究会をしていたりとのことで、今回も実質応援だろう。

中盤、渡部女流二段の桂馬の成り捨てから激しい展開となり、瞬間的に後手の駒損ながら穴熊の堅さも活かして後手優位に進んでいく。後手から桂馬での角金両取りの局面からは後手がとても指しやすいように思える展開に。ただ、先手は一段目に竜を作り後手の玉に遠方から狙いをつけている。
そんな中、いままで強気で攻めていた後手が 32銀と引き、先手からの43の地点への攻めに対する受けの手を指す。ここで一気に形勢が逆転し先手が優勢となる。将棋は難しい。
以降、棋譜は公式サイトから確認いただけれ分かるが、後手玉は寄りの状態に。

だが、ここで詰めかけた300人強の念力が働いたのか、北海道の大地の力が働いたか、里見女流王位が詰み手順を間違えるという大事件が発生する。
大盤解説会の野月・田村の両先生は、「(負けたけど)良い対局だった。次につながる。」と諦めのコメントをしていた最中のことで、棋譜中継の更新を元に検討を重ねると後手玉が詰まない = 後手が勝つ、ということに気が付き、会場が騒然となる。いや、騒然どころではなく、悲鳴に近い歓声が沸き起こっている。急きょ、(終局に備えて)対局場近くで控えていた屋敷九段も大盤解説会場に戻ってきて、解説に加わり、検討を始める。後手玉はするスルスルと逃げることができ、詰まない! 色々な詰み手順がありそうな局面だけれども、どうやら正解は一つ、23香だけだったようである。

里見女流王位も指してから気が付いたようで、指し手が進まない。
長い時間を費やし、(多分、観念した様子で力なく) 金を打つ。後手はその金を馬で取る。パタパタと進む。あとはどのような終局図にするかどうかだけの問題のようである。

屋敷九段が「ここで飛車を打って投了したらかっこいいね」と言っていた通りになり、114手目の局面で里見女流王位が投了する。


(終局直後の渡部愛女流二段 中継サイトより)

終局後、二人の対局者が大盤解説会の会場に来てくれた。
表情が硬いままの渡辺女流二段は、「中盤は難しく、はっきりと悪手を指した局面もあり苦しかった。次局もご注目頂けるように頑張ります。」と控えめなコメント。
里見女流王位は、「最後の方で、うーん、絶対に詰まないですよね?」と表情柔らかに、吹っ切れたかのような軽い笑顔も見せながら、詰みを逃したことを悔いているよう。「里見さんが詰ませられなかったら、ここにいる誰も詰ませられなかったと思います。」という屋敷九段からの優しいフォローにも、里見女流王位は笑顔で、続けて「酷い手を指してしまい、将棋の怖さを思い知った一局となりました。こんな逆転負けは記憶になく、でも(これだけ明快に間違ったのであれば)切り替えやすいので次も気を引き締めて頑張ります。」と、精神的なショックは無いように見えます。この切り替えこそが強さの秘訣かもしれませんね。北海道で美味しいものを食べて英気を養ってください。


会場を後にすると、外の気温は 8 ℃。北海道の夜はまだまだ寒い。でも、今日は本当に熱い戦いを見ることができた。
今日は渡部愛女流二段の応援、でも、里見香奈女流王位も応援している。
今回のタイトル戦は、どちらが勝っても、人生の節目となりそうなタイトルとなるであろう。だから私は見守りたい。今回の二人の戦いの行方を、女流棋界の新しい未来を。


#大盤解説会
今日も疲れた!
明日は仕事してから横浜に帰るよ!


第3期 叡王戦 第1局 現地大盤解説会に行ってきた

始まりは尾張名古屋の第3期叡王戦。
昨年の第2期叡王戦・電王戦の後、タイトル戦になることが発表された。それから1年、タイトル挑戦者は金井恒太 六段、高見泰地 六段に決まり、いよいよタイトル戦の火蓋が切って落とされる。

第2回電王戦から将棋を指すようになった私は、機会があれば電王戦、叡王戦の大盤解説に足を運んでいた。今回の歴史の1ページを見逃すわけにはいかない。対局は土曜日だし、名古屋ならいける範囲だ。

2018年4月14日 名古屋 曇り

[名古屋城を歩く]
朝、新横浜から新幹線に乗り名古屋へ。目指すは名古屋城。

名古屋城に着き、探すのは対局会場である茶席。

名古屋城内に発見するも、ここから先は入場できず。
周辺から眺めてみる。 


名古屋城の後ろ側に位置し、観光客はほとんど来ない。閑静。

せっかくなので天守閣に登り、上から茶席を眺めてみる。

[名古屋飯]
せっかく名古屋に来たのだから名古屋飯を食べたい。
城外のすぐ隣にレストラン街があり、ニコ生の中継では中澤女流が紹介していた場所。
大盤解説会前に腹ごしらえすることにする。

鰻大好きなので、迷うことなくひつまぶしを食べに行く。
 
私が食べたのは、備長ひつまぶしの上ひつまぶし。
鰻を炭火で香ばしく焼かれている。言うまでもなくとても美味しい。
(金井六段の昼食と鰻自体は同じだろう)

[大盤解説会場へ]

名古屋城の入り口からも会場となる KKR ホテル名古屋 が見える。
12時ぐらいに会場に着き開場を待っていると、あれよあれよと人が増えていき、12時半開場の前に既に100人を越える観客が列をなすことになった。用意されている席は100席あるかどうか。そして、実際、最大でたぶん50名ぐらいが立ち見となったように思う。運営としては予想外の人出だろう。
大盤解説の来客数予想というのは難しい。半分ぐらいしか埋まらないこともあるし、立ち見になることもある。


今回は叡王戦スポンサーから嬉しいお土産が提供された。
マカフィーは先着30名。



13時となり、解説 山崎隆之 八段、聞き手 長谷川優貴 女流二段のコンビで大盤解説会が始まる。

山崎八段はトークも攻めの棋風で会場を沸かせる。

長谷川女流は大忙し。

福崎九段からの質問に「好きな芸人はサンドイッチマンさんです。」と答える長谷川女流。なんでそんな話になったっけ?
なお、ニコ生放送される前に、この写真の左手前に写っている子どもが「王将って歌知ってる(福崎九段)」の問いを受けて「王将」(村田英雄)を歌うというハプニングがある。この出来事を経て、福崎九段が「王将物語」の一節を歌うこととなる。

戦型は事前の大方の予想通り「横歩取り」。
数手で公式戦では前例のない形となり、1手を慎重に指すスローペースとなる。
名人戦に続き、タイトル戦での横歩取りで、観る側としては難解過ぎてついていけない。形勢判断も難しく、1手ごとというよりは10手先ぐらいも見据えての良し悪しが検討される。

途中地震がありましたが、名古屋城付近は微動でした。震度1ぐらい。

現地の棋士が代わる代わる解説会場に登場する。

なぜか千田六段と佐々木四段も会場に来てくれる。フットワークが軽い。

佐々木四段の今日のネクタイは高見六段からお祝いで貰ったものとのこと。


[終局へ]
対局は既報の通り高見六段の勝ち。
夕食休憩前までは互角あるいは先手やや指せるぐらいの形勢と思われたが、金井六段の千日手を狙ったと考えられる金打ちから、ほぼ一直線に形成の針は高見六段に傾いた。
横歩取りは恐ろしい。

山崎八段は、「通常はタイトル戦は取れなければ元に戻るだけなのだけど、今回は違う。勝った側は人生が変わる。取れなかった側の喪失感が大きすぎる。」と言う。金井六段は C1、高見六段は C2 と順位戦では下位で、タイトル取る取らないでは差が大きすぎるとのこと。
叡王戦は序列3位となるタイトル戦。上には羽生竜王、佐藤名人しかいない。それ以外の棋士に対しては王将(上座)を持って指せる。それが将棋の世界。豊島八段は「どちらも応援しない」と笑って答えていたが、そりゃそうだろう。棋士同士全員がライバルなのだ。どんなタイトルだって他の人が取れば悔しいに違いない。

秒読みになることなく終局。
ニコ生の台本では、21:00 までタイムスケジュールが書かれていた。予想よりは早い終局だったかもしれない。

大盤解説会が終わり、解説・聞き手の両者は会場を後にしたものの、ロビーでツーショット(長谷川・中澤とのスリーショットも)写真の要請に応えていた。疲れているはずなのに、棋士・女流棋士皆さんが笑顔。こうした地道なファンサービスが確実に将棋ファンを増やしていくのでしょう。

会場を後にすると、名古屋の夜は冷たい雨となっていた。
私は「初戦に負けた方がタイトルを取る」と予想していました。でも金井六段の負け方がちょっと気になります。でも、きっと次戦は体勢を整えて戦ってくれることでしょう。せっかくの新しいタイトル戦で、且つ、後ろの方では持ち時間が違ってくるので、ぜひとも第7戦までもつれ込んで欲しいものです。

次戦は4月28日 福岡。楽しみ。

今日も疲れた!







第76期名人戦七番勝負 第一局 椿山荘 #大盤解説会に行ってきた

2018年4月11日(水)、12日(木) 東京 ホテル椿山荘
遂に第76期名人戦が始まる。
例年よりも温暖な3月は早くに桜を咲かせ葉桜へと姿を変え、4月の東京は初夏とも思わせる気候が続いていた。
波乱というべきか、順当というべきか、名人への挑戦権は羽生竜王が手にしていた。目まぐるしく時が進んだ2017年度の将棋界は、永世七冠、国民栄誉賞、藤井六段(四段、五段)の台頭、タイトルの遷移、A級順位戦とプレーオフ、と私たち将棋ファンを飽きさせることがなかった。この嵐ともいうべき1年の最後に、第4コーナーを大外からぶっちぎってきたのが羽生竜王である。その恐るべき馬脚は48歳にして衰えず、むしろ力強くさえなっている。自然の摂理が働かない異世界の住人か。
迎え撃つ佐藤天彦名人は、より一層個性が際立つ1年だったように思われる。数々のメディアでの露出で、違った側面から将棋にスポットライトを当てさせていた。昨年は稲葉八段の挑戦を退け、名人の座をしっかりと自分のものとしている。まずは三連覇、そして五連覇での永世位獲得という野心も無くしてはいないだろう。

目白駅からバスに乗り椿山荘に向かう最中、3月の浮月楼での出来事を思い返していた。静かに興奮した最終局一斉対局での深夜の決着。あれから1か月ほどが経過している。振り返りたくなる3月。濃厚で脂っこい3月。

大盤解説会場は、ホテル椿山荘 1F ギャラクシー。
その名にふさわしく UFO のような巨大シャンデリアが私たちを出迎えてくれる。

今年は大盤ではなく、PC とプロジェクターによる解説会で後ろの席からは見やすいかもしれない。


解説は戸辺七段、聞き手は甲斐女流五段である。
女流五段という肩書は、改めて聞くと厳かだ。
戸辺七段は終始、軽快に、時折色々なエピソードを交えて話を進めてくれ、手の進みが遅い初日も大いに楽しむことができた。
甲斐女流は、詰めろ・詰みの見え方が本当に早く、戸辺七段との息もぴったりで、清々しい気持ちにさせてくれる。

戦型は大方の事前の予想通り、「横歩取り」となり、初日は激しいながらもスローペース。
たぶん、戸辺七段、甲斐女流共に横歩取りは公式戦では指さないであろうながらも、近年の傾向や昨今の対局情報なども加えながら、分かりやすく解説がなされる。


初日には立会人の森九段も解説会場に来て、自身のアマチュアの頃のエピソードを話してくださった。長身でスマートな森九段はカッコいい。古い映像で見た名人に挑戦する端正な若者の影は、いまだに残っていると感じる。どこか生意気で鋭さがあり、でも押しつけがましくない。若輩の私が言うのも失礼かもしれないが。

二日目に入り、一手一手が慎重に指され、形勢判断がどんどん難しくなっていく。
副立会人の阿久津八段、大石七段、ゲストで伊藤五段、渡辺棋王、広瀬八段など、錚々たる棋士が解説を進める。揺れ動く判断。何度も口から出る「難解」という言葉。もうアマチュアには理解できない領域の将棋は、最高峰たる名人戦に相応しい大熱戦となっている。

副立会の二人

「近所なので来ました」と言う伊藤真吾五段

順位戦では色々あったが、本解説会では絶口調の渡辺棋王。

再びの A級となる阿久津八段。

「伊藤五段は詰将棋選手権12位ですが、私は5位です」と笑いを誘う広瀬八段。

形勢は揺れ動き、一時は後手にも振れたと思われるものの、ここでの解説会では終始、先手良しのスタンスで解説が進められていたように感じる。それだけ羽生竜王の信頼が絶大ということであろう。

変化が多く、じっくりと進む将棋。
解説会場では対局場の音声が入ってこないため、指し手が進むと観客から声が上がる。300人以上の来客で膨れ上がった会場の熱気と呼応するように解説が進む。まるでコンテンポラリージャズでコールアンドレスポンスに興じているかのようだ。会場全体が名人戦を戦う二人、将棋へのリスペクトが止まらない。この空気感こそが現地大盤解説会の魅力だ。

20時を越え、いよいよ終息を迎えようとしている。急な展開で合意をした二人は、長い長い終盤を二日に渡り戦い続けた。でも将棋はいずれ終わりが来る。最後はパタパタと進む。

結果は既報の通り、先手 羽生竜王が勝ち、通算1400勝を達成しました。故・大山名人より約20年早く1400勝を達成したそうです。最早意味が分かりません。



時計の針をも進ませぬ絶対的な強さを感じる一局。
名人奪取で、後10年は君臨し続けそうな気配。
そういった余韻に浸りながら帰宅の途に着きました。

自宅に帰ってきたらテレビニュースでも報道されていました。
いつもの、勝った後に淡々と話す羽生竜王。


第2局、佐藤名人の逆襲なるか?
本当に楽しみです。

今日も疲れた!

第76期将棋名人戦・A級順位戦 最終11回戦 現地大盤解説会に行ってきた

 2018年3月2日 金曜日 静岡
青空で晴れ渡り、春を予感させる清々しい朝を迎えていた。

将棋界の一番長い日」と称される A級順位戦の最終対局日は、千駄ヶ谷の東京 将棋会館ではなく、静岡市 浮月楼で全5局が指される。名人挑戦の行方は未だ決していない。しかも対局の勝敗によっては最終対局を終わっても決まることが無い。期待と緊張が織り交ざった異様な空気は将棋ファンの間にも広まっていた。これほどまでに星取表を眺めて夢想する時間が多かった日々は無いかもしれない。いろいろな可能性をもったシナリオに、各棋士のファンは様々な祈り方をしていた。
そして、遂に歴史的な一日が始まることとなる。



第76期 A級 順位戦は 11人によるリーグであったため、対局がない抜け番の日がある。
羽生竜王は既に6勝4敗で終え、最終日には対局が無い。
この日はファンサービスのために現地に来ている。午前中は指導対局・サイン会で、その後、名古屋に移動し講演会を行い、再び静岡に戻ってきて大盤解説会で解説をするという超多忙スケジュール。
「ええ、当然、最後の対局が終わるまで見守ります。」と言う羽生竜王。なんというタフさだろうか。


(取材陣のインタビューに答える羽生竜王)


(指導対局とサイン会。ラッキーな人が羨ましい。)


対局はいつもより早い 9:00 から開始する。大盤解説会は 14:00 からで、それまでは各棋士による指導対局やサイン会が行われる。

ファンや棋士達から、ありとあらゆるプレッシャーをかけられる髙見六段。もちろん来月からの叡王戦に対してである。六段のサイン色紙がプレミアとなるだろうか?


大盤解説会では多くの棋士が代わる代わる丁寧に解説をする。
福崎九段はいつも通り場を盛り上げる。解説しない解説がいつも楽しみでしょうがない。上村四段は真面目過ぎて、将棋の解説をしようとする。いや、それは普通なのだけど、ここは台本通りにする必要は無いのですよ。
(中央に寄り過ぎてプロジェクターの光を浴びるものの動じない福崎九段)
    

女性から大人気の斎藤七段はトークも滑らか。再びのタイトル戦登場はいつになるだろうか?

 
環那さんは羽生竜王の解説聞き手を務め、まるで試験を受けているよう。安易に分からないと答えることなく指し手を考える姿を見ると応援したくなる。



森内専務理事は高見6段というおもちゃを見つけて楽しそう。
この日は裏方として忙しそうです。



午後、対局場となっている部屋のカーテンが空けられる。どうやら行方-広瀬の対局場のようである。行方九段の悩ましい顔を垣間見る。


九段先生も続々と。


「次の一手」で2階と3階で同じ回答にするということで、上村四段と高見六段が電話で会話をする。どうせなら両会場ともPC繋いでいるのだから、Skype にして画面にも出せば良いのにね。
その他、設営面はいろいろと改善したほうが良さそうなのだが、こんなに大人数の観客が集まるのも稀だから想定していないことも多いのだろう。


師匠の深浦九段の応援に駆け付けた佐々木大地四段も登壇。師弟愛凄いね。

夜になり各対局の優劣がつきはじめる。
22時を過ぎ、豊島投了の一報で会場の女性ファンの悲鳴が上がる。豊島八段が名人挑戦権を得るには久保王将が敗戦しなければならない。深浦-久保戦は難解。深浦良しから久保逆転の流れという解説に何とも哀しげな声が漏れる。

 
疲れを全く見せない羽生竜王。
解説が本当に分かりやすい。対局者が今何を考えて、どこをゴールにしているのかということを交えながら指し手を解説する。

大盤解説の途中休憩の間、会場に設置された小モニターで渡辺-三浦戦のニコ生中継が放映されている。渡辺棋王投了で見入っていた観客が拍手をする。三浦九段残留が決まる。渡辺棋王の降格はこの時点では決まっていない。深浦九段が負ければ渡辺棋王は残留となる。

最後の大盤解説。
大方の予想通り一番最後まで残ったのは深浦-久保の対局となった。
どちらも粘り強い棋風で簡単に土俵を割ることは無い。観客は固唾をのんで推移を見守る。
久保挑戦かプレーオフか。
深浦残留か降格か。
渡辺残留か降格か。

結果は既報の通り。
最後の最後に久保王将の粘りも空しく、投了となった。

最終局のすべてが終わり、同時に全てが決まった。
「将棋界の一番長い日」は、その日で終わることなく前代未聞の6者プレーオフとなり、名人戦挑戦者の決定は後日持越しとなった。そのプレーオフ初戦は、実質中一日、日曜の対局。王将戦タイトルの最中である久保-豊島である。4月からの名人戦に間に合わせるためとはいえ、棋士には酷な日程だ。

想定されていたとはいえ、本当に6者プレーオフになるとは誰が考えていただろうか。
こんな歴史的な日に現地にいれたことを幸運と思うしかない。
ネット中継を見ていた多くの人も歴史の証人の一人。きっと何年にもわたり、今日の日のことを語り継ぐであろう。

深夜0時をまわり、大盤解説会もお開きとなる。
三々五々、観客は会場を後にする。
ファンの私たちには、まだ楽しみが残されている。プレーオフの行方はどうなるのだろうか?
この激戦を制した挑戦者と天彦名人との戦いはどうなるのだろうか?
羽生竜王名人はあるのだろうか?
佐藤会長名人はあるのだろうか?


将棋界は一昨年四段となった少年が持つ大きな重力で潮流が変わっているのかもしれない。
この不思議な事象を体感するのは今しかない。いずれ大きな流れとなり、それがニューノーマルとなるであろう。
そんな事を考えながら、私も浮月楼を後にした。


来年も浮月楼で最終局が行われるのだろうか?
再び徳川慶喜に会えると思うと楽しみでならない。

(文 @totheworld)